不況から脱出するために必要なものとは

内外における以上の経済的矛盾、歪み、摩擦を克服して、わが国民経済の発達を今後永く持続するには、このさいいかなる対策が必要か。これが現下のわが焦点的問題である。その適切な施策そのものは、つぎの二つの軌道修正を総合的に実施することである。第一の軌道修正は、国民経済の資源の配分を、資本不足段階のそれから、資本充実豊富段階のそれに大修正することであり、第二の軌迫修正は、産業の体質と構造とを、青少年期的段階のそれから、壮年期的段階のそれへ(従来の量的発達から質的発達へ)修正発展させることである。

そしてこの両者は、個々別々のものではなく、相互に密接な関連性をもつ性格のものである。まず第一についてみる。敗戦後のわが経済は、設備貧弱、資本不足、国際収支赤字、失業者多数という基盤条件のもとで、経済の復興発達のために、国民的努力を重化学工業の第一次的発達に、優先的に集中せざるをえなかった。これはいわば貧困時代の生活態度である。しかしその後設備は充実して、43年以降国際経常収支は大幅の黒字に定着する段階にまで発達し、外貨準備は三〇億ドルを超過するにいたった。わが国民経済の運営方針は、これを転機として、従来の軌道を修正すべき段階に到達するにいたったのであった。

しかるに、右の段階にもかかわらず、所要の軌道修正はこれを怠り、依然、従来の軌道を続けた。この結果、国際収支は世界一の大幅黒字国となり、外貨準備は実質二〇〇億ドルと、西ドイツにつぐ世界第二の分限者となったが、このため、海外からは国際経済のバランスを破壊する″エコノミック・アニマル″との非難を招き、激しく貿易収支の是正、円切上げ等を迫られる「孤立」的地位に追い込まれるにいたり、国内的には、前記のような各種の社会的問題の顕現に直面することとなったのである。

顧みるに、わが社会投資は(住宅。環境を含めて)戦時中ほとんど中止せられ、戦後も右のように、これを永く二の次扱いにしてきた。この結果、これらの施設は国際的にはもちろん、国力に比しても著しく貧弱なままに残されるにいたったのである。このときにおいて、従来の軌道のもとでは、来幹産業の設備はすでに少なからず過剰となり、そのうえに対外輸出も既述のように少なからぬ圧迫を受け、まごまごすると円再切上げ、日貨圧迫、国際的孤立、という重大窮地に追い込まれることとなったのが現状である。以上に処するこの際の一石二鳥的効果対策は、従来の民間設備偏重の国民資源の配分をこの際根本的に改めて、GNPにおける、社会投資、福祉、個人消費の比重を、ここで思い切って引き上げるという、国民資源の再配分を断行する以外にない。すなわち、わが財政金融政策のあり方の変革である。